ハゼ、スズキ、カジカ類

コイ科以外の淡水魚でオヤニラミやカジカ、ハゼ類など現在スズキ目に分類される仲間です。
メダカなどスズキ目に含まれませんが系統的に同じグループも含めています(予定です)。
※スズキ目は遺伝的に多系統であり、Nelson et al.(2016)の「Fishes of the world(世界の魚類)第5版」などで
大規模な分割が提案されていますが、ここでは従来の分類に準拠しています。

採集場所で撮影したものや飼育している(していた)ものです。
※〜県=現地撮影 〜県産=水槽撮影です。

最終更新:18/9/20


パーチ(スズキ)類(スズキ目スズキ亜目)

従来スズキ亜目はアジ、ブラックバス、シクリッド類などさまざまな「魚らしい魚」を含むグループでしたが、遺伝的に寄せ集めであることは以前から予期されており、近年になって大規模な分割が試みられるようになっています。代表的な例をいくつか挙げると、
  • テンジクダイ科→コモリウオ目
  • アジ科、シイラ科など→アジ目
  • サンフィッシュ科→サンフィッシュ目
  • シクリッド科→シクリッド目(スズメダイ科は目未確定)
  • タカサゴイシモチ科→目未確定またはボラ目に編入
  • タイ科、キス科など→タイ目(アンコウ目、フグ目の姉妹群)
などがあります。
現在では目未確定の科も数多く、ちょうど植物でユリ科が分割された時のように、分類が落ち着くまではもう少しかかるのでは、と思います。

オヤニラミ

Coreoperca kawamebari

ケツギョ科・オヤニラミ属

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2009/撮影日不明 東京都多摩川水系

観賞魚として人気が高い純淡水性のスズキ亜目魚類です。
関東のマニアではよく知られた「多摩川産オヤニラミ」です。
関東の河川は西日本と比べ比較的河川敷を広めにとる護岸工事で、この魚が好むワンドができやすいことが、定着して増えている原因であると思います。
多摩川水系で初めて確認されたのは2000年とされています。2015年ぐらいまでは頻繁に見られましたが、それ以降は減少傾向にあるようで、最近(2018年)はまだ確認できていません。いいことなのでしょうが、ネットで有名になってマニアが押し寄せたためである可能性が高いので手放しで喜べません…。

外来生物法のせいで、オオクチ・コクチ・ギルが飼えなくなってしまったため、現在は日本の河川で普通に採集して飼える唯一の純淡水性パーチ類となってしまいました。

コクチバス

Micropterus dolomieu dolomieu

サンフィッシュ科・オオクチバス属

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2018/6/3 東京都荒川水系
東京と埼玉の県境を流れる荒川水系の某支流で釣りました。埼玉側でバス・ギルを釣った場合、規定(内水面漁業調整規則?)でリリースが禁止されているので要注意です

ブラックバスの仲間です。スモール、スモールマウスなどと呼ばれます。多摩川水系ではあまり見かけませんが、荒川水系では普通に見られるようです。
国内に定着しているサンフィッシュ科では最も美味とされています。写真の個体を実際に食べてみましたが、皮も臭みがほとんどなく、旨味が強くてオオクチバスやブルーギルよりずっと美味しいと感じました。小さいのでビジネスホテルのアジの開き程度しか食べるところがなかったのが残念ですが…笑。調理法にもよりますが、マス類やアユに匹敵するかそれ以上の美味な魚だと思います。
上の記事にもある通り、現在新規に飼育を始めることができません。規制前に飼っていたオオクチバスはかなりよく慣れてくれたので、飼育できればと悔やまれます。

ブラックバス類は典型的なスズキ型をした魚ですが、他のスズキ亜目魚類とは遺伝的に孤立した系統で、Nelson et al.(2016)のFishes of the world最新版では独立のサンフィッシュ目とされています。かなり古い年代(遅くとも白亜紀の中期〜後期)に他のスズキ類から分岐・陸封されたものと考えられます。
ただ、これはサンフィッシュ科が特別に離れているというより、「今まで"科"レベルの違いだと思われていたスズキ亜目の科どうしが遺伝的に棘鰭類の"目"、例えばダツ目、フグ目、カサゴ目などと同等かそれ以上の差があるものが多かった」と言った方が正確です。

ハゼ類(スズキ目ハゼ亜目)

ハゼ類は長い間スズキ目に含まれていましたが、Fishes of the worldの第5版などではコモリウオ目(アポゴン、テンジクダイの仲間)とともにスズキ類の中で最初に分岐した系統とされ、独立のハゼ目に分類されます。ただこれには異論もあり、Miya and Nishida(2015)などではコモリウオ目と単系統のクレードを形成する点では一致していますが、スズキ系の基底的グループではなくヨウジウオ目やトウゴロウイワシ目などと同一のクレードに属しており、結論が出るにはまだ時間がかかりそうです。
なお、スズキ類のクレードより前に分岐した初期棘鰭上目にはキンメダイ目やアシロ目、ガマアンコウ目などがあります。
ガマアンコウはアクアリウムで淡水アンコウとして流通する汽水魚で、アンコウ目のカエルアンコウ(元イザリウオ)とは全く関係ない魚です。

21世紀初頭に分割が試みられて以降ハゼ科の分類は未だに混乱しており、亜目レベルで違いがあるとされるカワアナゴ科やドンコ科を除き、共通認識はまだ見いだせていない模様です。

ムサシノジュズカケハゼ

Gymnogobius sp.

ハゼ科・ウキゴリ属

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2009/撮影日不明 東京都多摩川水系

那珂川から多摩川にかけての関東平野部を流れる川の中流域にいるハゼです。
多摩川中流ではヨシノボリ類よりこちらのほうがずっと多いです。
メスに婚姻色が出ます。

トウヨシノボリ種群(クロダハゼ類)

Rhinogobius kurodai

ハゼ科・ヨシノボリ属

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2018/5/26 東京都多摩川水系
現トウヨシノボリ/旧オウミヨシノボリと思われる

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2018/7/21 東京都多摩川水系
最初はカワヨシノボリの大きい個体かと思ったが、胸びれ鰭条数が多く背びれが伸びないためクロダハゼと思われる
一般に小型とされるクロダハゼですが7cm以上になる個体群もあります。多摩川水系の某支流、その一部水域だけで見られる系統です
大型個体でも第一背びれが伸びず、尾びれの橙色斑も小さく目立たないため、ヨシノボリの中でも非常に地味な種類

多摩川水系ではクロダハゼが在来で、琵琶湖由来のトウヨシノボリが奥多摩湖に移入されています。後者は中流域にも放流されている可能性がありますが、琵琶湖系トウヨシノボリ(旧オウミ)と思われる個体、交雑が疑われる個体は今のところ多摩川水系中流域では確認していません。
カワヨシノボリに押されて減少傾向と考えられます。もともとの生息数があまり多くなかったこと、生息環境が異なることなどからどの程度影響があるかは未知数です。埼玉県内の荒川水系でもクロダハゼと思われるトウヨシノボリ系の魚を採集したことがあります。分類が混乱しており、整理が望まれます。

カワヨシノボリ

Rhinogobius flumineus

ハゼ科・ヨシノボリ属

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オス

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メス
胸ビレ軟条数が18本以下(この個体は15?)であればカワヨシです
2018/6/9 東京都多摩川水系

東海以西ではポピュラーなヨシノボリで、ごく一般的に見られ簡単に捕れるので食用としても各地で利用されています。多摩川水系では一部の支流で10年ほど前から定着しており、個体数は非常に多く、サイズも大きい個体が豊富です。多摩川はもともとオオヨシノボリのような急流型ヨシノボリが極めて少ないかほぼ皆無なため、流れの速い場所でも見かけます。カジカ大卵型やクロダハゼへの影響が懸念されます。

タモ網で簡単に捕れます。クロダハゼ類やオオヨシノボリとは生息環境のほか、オスの第一背びれが顕著に伸びること、メスの腹部が薄青にならないことで見分けられますが、正確な同定には胸びれ軟条数を確認しましょう。
ヨシノボリでは最も美味とされますが、まずくはないものの特別おいしい魚でもなかったと記憶しています。餌の関係なのかヨシノボリの中では意外と長生きさせるのが難しいように思います。

ヌマチチブ

Tridentiger brevispinis

ハゼ科・チチブ属

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2018/5/26 東京都多摩川水系

ハゼ釣りの外道「ダボハゼ」としておなじみのチチブの近縁種です。多摩川では下流域に在来分布、奥多摩湖におそらく琵琶湖由来の系統が移入分布します。琵琶湖は移植分布なので、もともとどこ由来なのかはわかりません。
引かない、気が荒い、食べても美味しくない、可愛くない(これは主観が入りますが)と4拍子揃った外道魚です。「川のヌマチチブ、海のクサフグ・キタマクラ」魚に罪はないんですがね…。
ついでに言うとよく針を飲みます。勘弁してほしいですね。

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